第5コーナー ~競馬余話~
第58回 「七不思議」
2016.01.12
Tweet
11月22日に京都競馬場で行われた第32回マイルチャンピオンシップではリアルインパクトとダノンシャークの走りに注目していた。それはジンクスが続くのか、それとも崩れるのかを確認する作業だった。
そのジンクスとは「ディープインパクト産駒の牡馬は中央競馬のGⅠレースで2勝できない」だった。
リアルインパクトは2011年に3歳の身で安田記念を制した天才肌の競走馬。ダノンシャークは前年のマイルチャンピオンシップでハナ差の勝負を制して栄冠に輝いていた。しかしリアルインパクトは8着、ダノンシャークは10着に終わり、優勝したモーリスから3馬身近く離されてゴールした。ジンクスは生きていた。
2010年に競走年齢に達したディープインパクト産駒は初年度から大活躍した。産駒が3歳になった2011年の桜花賞でマルセリーナが優勝。父に初めてのGⅠタイトルをプレゼントしたのを皮切りに、2015年のジャパンカップ(優勝馬ショウナンパンドラ)まで、この原稿を書いている時点でGⅠレース合計27勝という勝ち星を積み上げてきた。GⅠレース勝利数の種牡馬別ランキングで歴代トップであるサンデーサイレンス(USA)の71勝には及ばないが、ブライアンズタイム(USA)の24勝を抜いて、歴代2位につけている。
2015年10月12日には、東京競馬場でラベンダーヴァレイが2歳新馬戦で優勝し、中央競馬で産駒が通算1,000勝を達成した。初出走から5年3ヵ月23日での達成は、キングカメハメハの6年1ヵ月6日を上回って史上最速記録となった。また10月18日にはミッキークイーンが秋華賞を制し、中央競馬での重賞も通算100勝に達した。この記録も父親であるサンデーサイレンスの5年11ヵ月3日を塗り替え、5年3ヵ月29日の史上最速記録となった。
競走馬としても超一流だったディープインパクトは、種牡馬としても超一流の道を歩む。そんなディープインパクトに数少ない弱点があるとすれば、牡馬に中央競馬GⅠ2勝馬がいないということだろう。競馬界の七不思議だ。
ディープインパクト産駒の牡馬として初めてGⅠを制したのは2011年のリアルインパクトだった。戸崎圭太騎手を背に安田記念をものにした。2012年はディープブリランテが日本ダービーを制し、父子2代制覇を達成した。2013年もキズナが日本ダービーで優勝し、トーセンラーがマイルチャンピオンシップを制した。2014年はミッキーアイルがNHKマイルカップを逃げ切り、スピルバーグが天皇賞・秋で優勝、ダノンシャークがマイルチャンピオンシップで勝ち、ダノンプラチナが朝日杯フューチュリティSで栄冠に輝いた。ところが、この8頭はその後、中央競馬のGⅠレースを勝っていないのだ。
リアルインパクトは2015年3月21日に遠征したオーストラリアのローズヒルガーデンズ競馬場でジョージライダーS(芝1500㍍)を制し、自身2つ目のGⅠレースをものにしているが、これは国外。中央競馬では安田記念のタイトルだけに終わり、このほど現役を引退して、種牡馬に転身した。
牡馬の成績に比べるとディープインパクト牝馬はジンクスなど、どこ吹く風の活躍を見せてきた。ディープインパクト産駒のGⅠ優勝馬19頭のうち過半数の11頭が牝馬で、ジェンティルドンナの6勝を筆頭にヴィルシーナとミッキークイーン、ショウナンパンドラが2勝とGⅠレースの複数勝利を飾っている。
ディープインパクトの父サンデーサイレンスはどうだったのか。GⅠ勝ち馬は計42頭。勝ち星の総数は前述したように空前の71勝だった。勝ち馬の内訳は牡馬が28頭で牝馬が14頭だ。決して牝馬が優勢だったわけではない。
皐月賞、ダービー、菊花賞、桜花賞、オークスのクラシック5レースに春と秋の天皇賞、有馬記念を加えたものを「8大レース」と呼ぶ。そのすべてを制した種牡馬は3頭しかいない。ヒンドスタン(GB)、パーソロン(IRE)、そしてサンデーサイレンスだ。このうちパーソロン産駒は牝馬に活躍馬が多かった。象徴的だったのがオークス4連覇だ。1971年のカネヒムロからタケフブキ、ナスノチグサ、トウコウエルザと優勝が続いた。「牝馬に強い」と言われたパーソロンだったが、20歳の時の種付けで生まれた牡馬シンボリルドルフが3冠馬に輝き、天皇賞・春、ジャパンカップ、有馬記念2勝とGⅠレース7勝の大活躍をし、歴史的名馬になった。ディープインパクトは現在のところ、牝馬向きの種牡馬といえそうだが、パーソロンがそうだったように後継種牡馬候補を送り出してほしいと思う。
そのジンクスとは「ディープインパクト産駒の牡馬は中央競馬のGⅠレースで2勝できない」だった。
リアルインパクトは2011年に3歳の身で安田記念を制した天才肌の競走馬。ダノンシャークは前年のマイルチャンピオンシップでハナ差の勝負を制して栄冠に輝いていた。しかしリアルインパクトは8着、ダノンシャークは10着に終わり、優勝したモーリスから3馬身近く離されてゴールした。ジンクスは生きていた。
2010年に競走年齢に達したディープインパクト産駒は初年度から大活躍した。産駒が3歳になった2011年の桜花賞でマルセリーナが優勝。父に初めてのGⅠタイトルをプレゼントしたのを皮切りに、2015年のジャパンカップ(優勝馬ショウナンパンドラ)まで、この原稿を書いている時点でGⅠレース合計27勝という勝ち星を積み上げてきた。GⅠレース勝利数の種牡馬別ランキングで歴代トップであるサンデーサイレンス(USA)の71勝には及ばないが、ブライアンズタイム(USA)の24勝を抜いて、歴代2位につけている。
2015年10月12日には、東京競馬場でラベンダーヴァレイが2歳新馬戦で優勝し、中央競馬で産駒が通算1,000勝を達成した。初出走から5年3ヵ月23日での達成は、キングカメハメハの6年1ヵ月6日を上回って史上最速記録となった。また10月18日にはミッキークイーンが秋華賞を制し、中央競馬での重賞も通算100勝に達した。この記録も父親であるサンデーサイレンスの5年11ヵ月3日を塗り替え、5年3ヵ月29日の史上最速記録となった。
競走馬としても超一流だったディープインパクトは、種牡馬としても超一流の道を歩む。そんなディープインパクトに数少ない弱点があるとすれば、牡馬に中央競馬GⅠ2勝馬がいないということだろう。競馬界の七不思議だ。
ディープインパクト産駒の牡馬として初めてGⅠを制したのは2011年のリアルインパクトだった。戸崎圭太騎手を背に安田記念をものにした。2012年はディープブリランテが日本ダービーを制し、父子2代制覇を達成した。2013年もキズナが日本ダービーで優勝し、トーセンラーがマイルチャンピオンシップを制した。2014年はミッキーアイルがNHKマイルカップを逃げ切り、スピルバーグが天皇賞・秋で優勝、ダノンシャークがマイルチャンピオンシップで勝ち、ダノンプラチナが朝日杯フューチュリティSで栄冠に輝いた。ところが、この8頭はその後、中央競馬のGⅠレースを勝っていないのだ。
リアルインパクトは2015年3月21日に遠征したオーストラリアのローズヒルガーデンズ競馬場でジョージライダーS(芝1500㍍)を制し、自身2つ目のGⅠレースをものにしているが、これは国外。中央競馬では安田記念のタイトルだけに終わり、このほど現役を引退して、種牡馬に転身した。
牡馬の成績に比べるとディープインパクト牝馬はジンクスなど、どこ吹く風の活躍を見せてきた。ディープインパクト産駒のGⅠ優勝馬19頭のうち過半数の11頭が牝馬で、ジェンティルドンナの6勝を筆頭にヴィルシーナとミッキークイーン、ショウナンパンドラが2勝とGⅠレースの複数勝利を飾っている。
ディープインパクトの父サンデーサイレンスはどうだったのか。GⅠ勝ち馬は計42頭。勝ち星の総数は前述したように空前の71勝だった。勝ち馬の内訳は牡馬が28頭で牝馬が14頭だ。決して牝馬が優勢だったわけではない。
皐月賞、ダービー、菊花賞、桜花賞、オークスのクラシック5レースに春と秋の天皇賞、有馬記念を加えたものを「8大レース」と呼ぶ。そのすべてを制した種牡馬は3頭しかいない。ヒンドスタン(GB)、パーソロン(IRE)、そしてサンデーサイレンスだ。このうちパーソロン産駒は牝馬に活躍馬が多かった。象徴的だったのがオークス4連覇だ。1971年のカネヒムロからタケフブキ、ナスノチグサ、トウコウエルザと優勝が続いた。「牝馬に強い」と言われたパーソロンだったが、20歳の時の種付けで生まれた牡馬シンボリルドルフが3冠馬に輝き、天皇賞・春、ジャパンカップ、有馬記念2勝とGⅠレース7勝の大活躍をし、歴史的名馬になった。ディープインパクトは現在のところ、牝馬向きの種牡馬といえそうだが、パーソロンがそうだったように後継種牡馬候補を送り出してほしいと思う。