第5コーナー ~競馬余話~
第3回 キーワードはSS
2008.08.25
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この春,日本を発祥とする血統のサラブレッドが世界中で大活躍した。まずはドバイだった。
かつてステイゴールドが優勝したこともあるドバイシーマクラシック(芝2400メートル)は3月29日,アラブ首長国連邦のナドアルシバ競馬場で行われ,オーストラリア生まれの南アフリカ調教馬サンクラシークが優勝,1着賞金300万ドル(約3億円)を獲得した。
サンクラシークはフジキセキ産駒の牝馬。フジキセキがシャトル種牡馬として日本とオーストラリアを行き来していた2003年10月にオーストラリアで生まれた。日本流にいえば5歳だが,南半球の数え方では4歳となる。
デコック調教師は,南アフリカのG1競走を3勝するなど実績のあった牝馬の目標をドバイシーマクラシックに定め,年明けにはサンクラシークをドバイに送った。そして,いずれもナドアルシバ競馬場の一般レースを2度走らせ(2連勝),3戦目をドバイシーマクラシックとするローテーションを組んだ。
レースは4番手から直線で抜け出す正攻法。後続との2馬身あまりの差を最後まで詰めさせることなく押し切る強い内容だった。
サンクラシークに続いたのは,米国の3歳牡馬テイルオブエカティだった。その母サイレンスビューティーは日本生まれである。馬名から想像されるようにサイレンスビューティーの父はあのサンデーサイレンスだ。
テイルオブエカティは昨年7月にベルモント競馬場でのデビュー戦を白星で飾った。3戦目となったG2のフューチュリティSを快勝して重賞ウイナーの仲間入りを果たす。今年になって,4月のウッドメモリアルS(G1)を勝ち,ケンタッキー・ダービーに駒を進めた。残念ながら,ケンタッキー・ダービーではビッグブラウンの4着に終わったが,今後に期待を持たせる内容だった。
そして日本の関係者をもっとも驚かせたのがナタゴラの快挙だった。 5月4日,英国ニューマーケット競馬場で行われた1000ギニー。日本の桜花賞に当たる3歳牝馬の大一番で,1番人気のナタゴラは堂々の逃げ切り勝ちを収めた。
ナタゴラの父はディヴァインライトである。ディヴァインライトといって,すぐに思い出せるのはかなりの競馬通。決して華やかなフットライトを浴びた馬でなかったことが,今回の出来事の衝撃度をさらに高くしている。
ディヴァインライトは父サンデーサイレンス,母メルドスポートの間に1995年5月10日に社台ファームで生まれた。美浦の伊藤正徳厩舎に入り,98年1月にデビュー。4戦目の毎日杯で2着になり,皐月賞,ダービーにも出走した。ただ後の戦績から推測すると,スプリンター色の強い競走馬だったようで,皐月賞5着,ダービー7着という成績は「健闘」と評価してもいい。
02年11月のマイルチャンピオンシップを最後に現役を引退するが,通算26戦4勝。G1高松宮記念をはじめ,重賞レースで合計5度の2着はあったが,ついに重賞勝ち馬になることはできなかった。
03年春に日本で種付けを行ったが,血統登録した産駒は3頭。人気はなく,暮れにはフランスに渡った。04年の種付けで誕生したのがナタゴラだった。
少し鼻の効く欧米の競馬人は,今,日本に目をつけている。サンクラシーク(父フジキセキ)とナタゴラ(父ディヴァインライト)は父方の祖父がサンデーサイレンス。テイルオブエカティは母の父がサンデーサイレンスだった。キーワードはサンデーサイレンスなのだ。
現にサンデーサイレンスを父に持つアグネスカミカゼ,グレイトジャーニーがフランスに渡り,ハットトリックは米国,タイガーカフェはチェコで種牡馬になっている。
あなたの牧場にサンデーサイレンスを父に持つ血統のサラブレッドがいたら,欧米のエージェントが声をかけてくるかもしれません。今が売り時であることは間違いありません。
JBBA NEWS 2008年6月号より転載
かつてステイゴールドが優勝したこともあるドバイシーマクラシック(芝2400メートル)は3月29日,アラブ首長国連邦のナドアルシバ競馬場で行われ,オーストラリア生まれの南アフリカ調教馬サンクラシークが優勝,1着賞金300万ドル(約3億円)を獲得した。
サンクラシークはフジキセキ産駒の牝馬。フジキセキがシャトル種牡馬として日本とオーストラリアを行き来していた2003年10月にオーストラリアで生まれた。日本流にいえば5歳だが,南半球の数え方では4歳となる。
デコック調教師は,南アフリカのG1競走を3勝するなど実績のあった牝馬の目標をドバイシーマクラシックに定め,年明けにはサンクラシークをドバイに送った。そして,いずれもナドアルシバ競馬場の一般レースを2度走らせ(2連勝),3戦目をドバイシーマクラシックとするローテーションを組んだ。
レースは4番手から直線で抜け出す正攻法。後続との2馬身あまりの差を最後まで詰めさせることなく押し切る強い内容だった。
サンクラシークに続いたのは,米国の3歳牡馬テイルオブエカティだった。その母サイレンスビューティーは日本生まれである。馬名から想像されるようにサイレンスビューティーの父はあのサンデーサイレンスだ。
テイルオブエカティは昨年7月にベルモント競馬場でのデビュー戦を白星で飾った。3戦目となったG2のフューチュリティSを快勝して重賞ウイナーの仲間入りを果たす。今年になって,4月のウッドメモリアルS(G1)を勝ち,ケンタッキー・ダービーに駒を進めた。残念ながら,ケンタッキー・ダービーではビッグブラウンの4着に終わったが,今後に期待を持たせる内容だった。
そして日本の関係者をもっとも驚かせたのがナタゴラの快挙だった。 5月4日,英国ニューマーケット競馬場で行われた1000ギニー。日本の桜花賞に当たる3歳牝馬の大一番で,1番人気のナタゴラは堂々の逃げ切り勝ちを収めた。
ナタゴラの父はディヴァインライトである。ディヴァインライトといって,すぐに思い出せるのはかなりの競馬通。決して華やかなフットライトを浴びた馬でなかったことが,今回の出来事の衝撃度をさらに高くしている。
ディヴァインライトは父サンデーサイレンス,母メルドスポートの間に1995年5月10日に社台ファームで生まれた。美浦の伊藤正徳厩舎に入り,98年1月にデビュー。4戦目の毎日杯で2着になり,皐月賞,ダービーにも出走した。ただ後の戦績から推測すると,スプリンター色の強い競走馬だったようで,皐月賞5着,ダービー7着という成績は「健闘」と評価してもいい。
02年11月のマイルチャンピオンシップを最後に現役を引退するが,通算26戦4勝。G1高松宮記念をはじめ,重賞レースで合計5度の2着はあったが,ついに重賞勝ち馬になることはできなかった。
03年春に日本で種付けを行ったが,血統登録した産駒は3頭。人気はなく,暮れにはフランスに渡った。04年の種付けで誕生したのがナタゴラだった。
少し鼻の効く欧米の競馬人は,今,日本に目をつけている。サンクラシーク(父フジキセキ)とナタゴラ(父ディヴァインライト)は父方の祖父がサンデーサイレンス。テイルオブエカティは母の父がサンデーサイレンスだった。キーワードはサンデーサイレンスなのだ。
現にサンデーサイレンスを父に持つアグネスカミカゼ,グレイトジャーニーがフランスに渡り,ハットトリックは米国,タイガーカフェはチェコで種牡馬になっている。
あなたの牧場にサンデーサイレンスを父に持つ血統のサラブレッドがいたら,欧米のエージェントが声をかけてくるかもしれません。今が売り時であることは間違いありません。
JBBA NEWS 2008年6月号より転載