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第85回 「継承」

2018.04.13
 名競走馬で名種牡馬だったサウスヴィグラス(USA)が3月4日、この世を去った。22歳だった。
 サウスヴィグラス・パートナーシップ事務局の三浦秀樹さんによると、1月26日に腸閉塞による疝痛を起こしたため開腹手術を行ったが、高齢だったこともあり、その後、回復することはなかったという。

 2017年はサウスヴィグラスにとって素晴らしい1年だった。産駒のヒガシウィルウィン(牡、船橋・佐藤賢二厩舎)がジャパンダートダービーでJRA所属馬を相手に優勝し、地方競馬の表彰式であるNARグランプリでは、年度代表馬と3歳最優秀牡馬に選ばれた。

 地方競馬において、産駒の獲得賞金の合計は10億1,007万5,000円にのぼり、3年連続通算4度目のリーディングサイアーに輝いた。出走頭数の307頭、出走回数の2,723回、勝ち馬頭数の185頭、勝利回数の411勝、そして前述の獲得賞金はすべて自己最多を記録した。2018年の種付料は200万円に達していた。そんな絶頂期での急死だった。

 1996年4月19日、米国で生まれたサウスヴィグラスは美浦・高橋祥泰調教師に育てられた。1998年、2歳11月のデビュー戦は2着。2戦目で初勝利を挙げると、続く朱竹賞にも勝った。しかし、その後は伸び悩んだ。本格化したのは6歳になってからだ。1月のガーネットSで2着となり、JRAの重賞レースで初めて連対すると、続く根岸Sで優勝。初の重賞制覇を果たした。

 フェブラリーSは6着に終わったが、地方遠征で快進撃を演じた。黒船賞(高知)、かきつばた記念(名古屋)、北海道スプリントC(札幌)、クラスターC(盛岡)と8月までに4連勝を飾った。だが、このレースの後に屈腱炎が見つかった。7歳になった2月に復帰して根岸Sで2連覇を飾ったが、詰めてレースを走ることはできなくなっていた。次のレースは6月の北海道スプリントC。1着になって連勝を6に伸ばしたものの、その後は10月の東京盃(大井、2着)とレース間隔をあけなければならなくなっていた。

 2003年11月3日、第3回JBCスプリントが大井競馬場で行われた。

 第1回の覇者ノボジャック(USA)、第2回の優勝馬スターリングローズ、2年前のフェブラリーSを制したノボトゥルー(USA)と強豪がそろう中、サウスヴィグラスはハタノアドニス、マイネルセレクトに次ぐ3番人気になった。

 柴田善臣騎手とコンビを組んだサウスヴィグラスは5番ゲートから好スタートを切ると逃げたナイキアディライトの外、2番手につけた。4コーナー手前でナイキアディライトの脚色が鈍ると勢いのまま先頭に躍り出た。ゴール前ではマイネルセレクトが急追してきたが、これをハナ差抑えて、待望のGⅠタイトルを手にした。同時に現役引退も決まった。

 通算33戦16勝。ダートの短距離戦に強く、重賞勝ちは中央・地方合わせて8勝を数えた。

 サウスヴィグラスの父エンドスウィープ(USA)は前年の2002年に急死していた。エンドスウィープは米国での種牡馬時代にサウスヴィグラスのほかスウェプトオーヴァーボード(USA)やプリサイスエンド(USA)という輸入種牡馬を送り出した。日本に輸入されて2000年から急死する2002年まで3年間種付けを行い、この数少ない産駒の中からスイープトウショウ(秋華賞、宝塚記念、エリザベス女王杯)、ラインクラフト(桜花賞、NHKマイルC)、アドマイヤムーン(ドバイデューティーフリー、宝塚記念、ジャパンカップ)と3頭のGⅠ馬を生んだ。「エンドスウィープ系」はその後も日本で枝葉を伸ばしている。

 スウェプトオーヴァーボード産駒のレッドファルクスは2017年にスプリンターズS2連覇を果たした。またアドマイヤムーン産駒のセイウンコウセイも2017年に高松宮記念を制した。

 サウスヴィグラスもそんな父エンドスウィープから受け継いだ種牡馬としての才能を見事に花開かせた。急死は惜しまれるが、その走力は必ず子孫につながるはずだ。
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