第5コーナー ~競馬余話~
第144回 「連敗」
2023.03.10
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2月19日に東京競馬場で行われた第40回フェブラリーSは坂井瑠星騎手が騎乗した牡5歳のレモンポップ(USA)が優勝した。美浦・田中博康調教師は開業6年目で初のGⅠ制覇。2023年最初のJRA GⅠは1番人気の快勝で始まった。
今年のフェブラリーSにはカナダからシャールズスパイトShirl's Speight (USA)、地方・浦和からスピーディキック(牝4歳、浦和・藤原智行厩舎)が出走した。注目を集めたものの、シャールズスパイトは9着、スピーディキックは6着に終わり、外国調教馬、地方所属馬のJRA GⅠ勝利は次に持ち越された。
フェブラリーSに外国調教馬が出走するのは40回目となった同レースの歴史で初めてのことだった。牡6歳のシャールズスパイトはカナダと米国で14戦5勝の成績を残していた。5勝のうち重賞勝ちは2022年のメーカーズマークマイル(米キーンランド競馬場、芝1600㍍)のGⅠとGⅢ2勝の計3勝。いずれも芝で獲得したものだった。ダートは2戦して勝ち星はなかったが、昨年のブリーダーズカップ(芝GⅠ)でも2着に食い込んだことのある実力馬だ。しかしフェブラリーSでは最後の直線で伸び切れず、9着に終わった。
外国調教馬がJRAのGⅠで最後に優勝したのは2015年の高松宮記念だ。香港を拠点にするエアロヴェロシティAerovelocity(NZ)がハクサンムーンに½馬身差をつけて快勝した。この勝利を最後に外国調教馬の連敗が始まり、フェブラリーSのシャールズスパイトで、その記録は「34」にまで伸びた。内訳はジャパンカップが21頭、スプリンターズSが3頭、チャンピオンズCが2頭、安田記念が4頭、高松宮記念と宝塚記念、エリザベス女王杯に今回のフェブラリーSが1頭となっている。この間にもっとも良い成績を挙げたのは2018年の宝塚記念でミッキーロケットの2着になった香港調教馬ワーザーWerther(NZ)だ。それ以外に馬券の対象になった馬はいない。
外国調教馬以上に苦戦を強いられているのが地方所属馬だ。
最後のGⅠ勝利は1999年のフェブラリーSである。岩手所属のメイセイオペラが菅原勲騎手とともに先頭でゴールした。この勝利を最後にJRA GⅠでの地方所属馬の連敗は「87」になった。
惜しいレースはいくつかあった。その代表馬はコスモバルクだ。
2001年、コスモバルクは北海道三石町の加野牧場で生まれた。父はザグレブ(USA)、母はイセノトウショウ、母の父はトウショウボーイという血統だ。北海道の田部和則調教師に育てられた。
2歳の8月、旭川競馬場でデビュー。2戦目で初勝利を挙げた。4戦2勝の成績で迎えた5戦目はJRAの百日草特別だった。東京競馬場の芝1800㍍戦。11頭立ての7番枠からスタートすると、向こう正面で先頭に立ち、追いすがるライバルを振り切り、そのまま先頭でゴールした。優勝タイムの1分47秒9は当時の2歳コースレコードのおまけ付きだった。2着に降したハイアーゲームは翌年の日本ダービーで3着になる実力の持ち主であった。
初めての経験で芝への適性を示したコスモバルクは北海道競馬所属のまま、その後もJRAのレースに挑んだ。2歳最後のレース、ラジオたんぱ杯2歳S(現ホープフルS)を逃げ切って重賞初制覇すると、年明け初戦の弥生賞(現弥生賞ディープインパクト記念)でも勝利を飾った。
1番人気に支持された皐月賞ではダイワメジャーをとらえきれず2着。ダービーではキングカメハメハの8着となった。
3歳秋は地元旭川であった北海優駿に出走し、快勝すると、再びJRAのレースに戻り、セントライト記念(現朝日杯セントライト記念)でJRA重賞3勝目を挙げた。3冠最後の菊花賞は2番人気の支持を受け、果敢に先行したが、勝ったデルタブルースから0秒3差の4着に終わり、クラシック制覇は夢と終わった。しかし続くジャパンカップではゼンノロブロイに次ぐ2着になり、3着で菊花賞優勝のデルタブルースに先着した。
5歳になった2006年の5月、コスモバルクは2度目の海外遠征をした。出走したのはGⅠのシンガポール航空国際C(芝2000㍍)だった。2番手から抜け出すと2着に1馬身¾差をつけて優勝した。地方所属馬の海外GⅠ制覇は史上初で、現在に至るまで、この1勝しか例がない。
地方競馬全国協会は昨年、全日本的なダート競走の体系整備とする方針を発表した。目玉は3歳ダート3冠レースの創設だ。羽田盃、東京ダービー、ジャパンダートクラシック(ジャパンダートダービーを改称)を南関東だけではなく、全国の地方競馬、さらにはJRA所属馬にも開放し、ダート競馬の盛り上げを図る。
盛り上がりに必要なのはコスモバルクのような「地方の星」だ。JRAのGⅠフェブラリーSで勝利をものにしたメイセイオペラのようなスターホースが出現しなければならない。
今年のフェブラリーSにはカナダからシャールズスパイトShirl's Speight (USA)、地方・浦和からスピーディキック(牝4歳、浦和・藤原智行厩舎)が出走した。注目を集めたものの、シャールズスパイトは9着、スピーディキックは6着に終わり、外国調教馬、地方所属馬のJRA GⅠ勝利は次に持ち越された。
フェブラリーSに外国調教馬が出走するのは40回目となった同レースの歴史で初めてのことだった。牡6歳のシャールズスパイトはカナダと米国で14戦5勝の成績を残していた。5勝のうち重賞勝ちは2022年のメーカーズマークマイル(米キーンランド競馬場、芝1600㍍)のGⅠとGⅢ2勝の計3勝。いずれも芝で獲得したものだった。ダートは2戦して勝ち星はなかったが、昨年のブリーダーズカップ(芝GⅠ)でも2着に食い込んだことのある実力馬だ。しかしフェブラリーSでは最後の直線で伸び切れず、9着に終わった。
外国調教馬がJRAのGⅠで最後に優勝したのは2015年の高松宮記念だ。香港を拠点にするエアロヴェロシティAerovelocity(NZ)がハクサンムーンに½馬身差をつけて快勝した。この勝利を最後に外国調教馬の連敗が始まり、フェブラリーSのシャールズスパイトで、その記録は「34」にまで伸びた。内訳はジャパンカップが21頭、スプリンターズSが3頭、チャンピオンズCが2頭、安田記念が4頭、高松宮記念と宝塚記念、エリザベス女王杯に今回のフェブラリーSが1頭となっている。この間にもっとも良い成績を挙げたのは2018年の宝塚記念でミッキーロケットの2着になった香港調教馬ワーザーWerther(NZ)だ。それ以外に馬券の対象になった馬はいない。
外国調教馬以上に苦戦を強いられているのが地方所属馬だ。
最後のGⅠ勝利は1999年のフェブラリーSである。岩手所属のメイセイオペラが菅原勲騎手とともに先頭でゴールした。この勝利を最後にJRA GⅠでの地方所属馬の連敗は「87」になった。
惜しいレースはいくつかあった。その代表馬はコスモバルクだ。
2001年、コスモバルクは北海道三石町の加野牧場で生まれた。父はザグレブ(USA)、母はイセノトウショウ、母の父はトウショウボーイという血統だ。北海道の田部和則調教師に育てられた。
2歳の8月、旭川競馬場でデビュー。2戦目で初勝利を挙げた。4戦2勝の成績で迎えた5戦目はJRAの百日草特別だった。東京競馬場の芝1800㍍戦。11頭立ての7番枠からスタートすると、向こう正面で先頭に立ち、追いすがるライバルを振り切り、そのまま先頭でゴールした。優勝タイムの1分47秒9は当時の2歳コースレコードのおまけ付きだった。2着に降したハイアーゲームは翌年の日本ダービーで3着になる実力の持ち主であった。
初めての経験で芝への適性を示したコスモバルクは北海道競馬所属のまま、その後もJRAのレースに挑んだ。2歳最後のレース、ラジオたんぱ杯2歳S(現ホープフルS)を逃げ切って重賞初制覇すると、年明け初戦の弥生賞(現弥生賞ディープインパクト記念)でも勝利を飾った。
1番人気に支持された皐月賞ではダイワメジャーをとらえきれず2着。ダービーではキングカメハメハの8着となった。
3歳秋は地元旭川であった北海優駿に出走し、快勝すると、再びJRAのレースに戻り、セントライト記念(現朝日杯セントライト記念)でJRA重賞3勝目を挙げた。3冠最後の菊花賞は2番人気の支持を受け、果敢に先行したが、勝ったデルタブルースから0秒3差の4着に終わり、クラシック制覇は夢と終わった。しかし続くジャパンカップではゼンノロブロイに次ぐ2着になり、3着で菊花賞優勝のデルタブルースに先着した。
5歳になった2006年の5月、コスモバルクは2度目の海外遠征をした。出走したのはGⅠのシンガポール航空国際C(芝2000㍍)だった。2番手から抜け出すと2着に1馬身¾差をつけて優勝した。地方所属馬の海外GⅠ制覇は史上初で、現在に至るまで、この1勝しか例がない。
地方競馬全国協会は昨年、全日本的なダート競走の体系整備とする方針を発表した。目玉は3歳ダート3冠レースの創設だ。羽田盃、東京ダービー、ジャパンダートクラシック(ジャパンダートダービーを改称)を南関東だけではなく、全国の地方競馬、さらにはJRA所属馬にも開放し、ダート競馬の盛り上げを図る。
盛り上がりに必要なのはコスモバルクのような「地方の星」だ。JRAのGⅠフェブラリーSで勝利をものにしたメイセイオペラのようなスターホースが出現しなければならない。