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第151回 「母父」

2023.10.11

 2023年9月17日に阪神競馬場で行われた第41回ローズS(芝1800㍍)はマスクトディーヴァ(牝3歳、栗東・辻野泰之厩舎)が1分43秒0という驚異的なJRAレコードタイムで優勝した。


 従来の芝1800㍍のJRAレコードタイムは2021年7月3日にエスコーラ(牡3歳、栗東・中内田充正厩舎)が小倉競馬場の未勝利戦でマークした1分43秒8だった。これを0秒8も更新してみせた。エスコーラがレコードタイムを作った日は小倉競馬の夏の開幕日で同じ日に芝1200㍍でもコースレコードが更新されていた。絶好の馬場状態だったことは確かだ。阪神競馬場の芝1800㍍の従来のコースレコードは2021年3月27日の毎日杯でシャフリヤール(牡3歳、栗東・藤原英昭厩舎)が作った1分43秒9。マスクトディーヴァは、のちのダービー馬のタイムを軽々と更新した。


 マスクトディーヴァは父ルーラーシップ、母マスクオフ、母の父ディープインパクトという血統だ。マスクオフの母ビハインドザマスクは現役時代10勝を挙げ、セントウルS、スワンS、京都牝馬Sと3つの重賞レースを制した快足馬だった。マスクトディーヴァの活躍もあり、9月18日時点で、JRAのブルードメアサイアー(母の父)ランキングでトップに立っているのはディープインパクトである。


 449頭が1,635戦し、139勝。獲得賞金は31億円あまりで2位のキングカメハメハに5億5,000万円以上の差をつけている。このまま年末まで1位をキープすることができれば、ディープインパクトにとっては初のリーディングブルードメアサイアーのタイトル獲得ということになる。


 重賞も10勝と中身が濃い。ヒンドゥタイムズの小倉大賞典に始まり、オオバンブルマイ(アーリントンC)、レッドモンレーヴ(京王杯スプリングC)、ヒートオンビート(目黒記念)、ビッグリボン(マーメイドS)、オールアットワンス(アイビスサマーダッシュ)、エヒト(小倉記念)、テーオーソクラテス(小倉サマージャンプ)、アスクワンタイム(小倉2歳S)、そしてマスクトディーヴァまで、GⅠ勝ちこそないものの、直線1000㍍から2歳戦、障害レースまで幅広く勝ち星を挙げている。


 ディープインパクトは2012年から昨2022年まで11年連続でJRAのリーディングサイアーとして君臨した。今年は9月中旬の時点でロードカナロア、ドゥラメンテ、キズナなどと首位を争っているが、12年連続の首位は危うくなっている。過去の歴史を振り返ると、JRAのリーディングサイアーはほとんどの場合、リーディングブルードメアサイアーになっている。JBISサーチで1974年以降のリーディングブルードメアサイアーを調べてみた。


 するとライジングフレーム(IRE)、ヒンドスタン(GB)、トサミドリ、ネヴァービート(GB)、パーソロン(IRE)、ファバージ(FR)、ノーザンテースト(CAN)、サンデーサイレンス(USA)、キングカメハメハという9頭の名種牡馬の名が挙がった。9頭のうちライジングフレーム、ヒンドスタン、ネヴァービート、パーソロン、ノーザンテースト、サンデーサイレンス、キングカメハメハの7頭はJRAのリーディングサイアーになった経験があった。また、複数年で首位に立ったことがあったという点で共通する。残る2頭、トサミドリとファバージはリーディングサイアーになったこともなかったが、リーディングブルードメアサイアーになったのも1年限り。ある年に良績が集中していた。


 そう考えると、ディープインパクトのリーディングブルードメアサイアー就任は不思議なことではなく、しごく当然の成り行きなのだ。今年も含め、来年以降も母の父ディープインパクトには注目しておかなければならない。


 ディープインパクト牝馬を母に持つ競走馬はどんなタイプが活躍しているのだろうか。


 2014年8月2日に札幌競馬場でモズノキセキ(牝2歳、父ヴァーミリアン)が出走したのが初出走で、以来、2023年9月18日までに、1,076頭が8,371戦し、366頭の勝ち馬が計713勝を挙げている。GⅠは3勝。2017年の菊花賞をキセキ(父ルーラーシップ)が勝ったのが第1号で、2022年のエリザベス女王杯ではジェラルディーナ(父モーリス)が優勝。同じ年の朝日杯フューチュリティSでドルチェモア(父ルーラーシップ)が1着になり、この年の最優秀2歳牡馬に選ばれている。


 GⅠ勝ち馬3頭のうち2頭が父ルーラーシップであることでもわかるようにディープインパクト牝馬はルーラーシップと相性が良いようだ。キセキ、ドルチェモアのほかには、ワンダフルタウン、エヒト、ビッグリボン、マスクトディーヴァと合わせて6頭が同じ組み合わせで重賞勝ち馬になっている。


 全体的に勝ち星が多いのは父ロードカナロアの組み合わせだ。全96勝は父ルーラーシップの85勝を上回っている。重賞勝ち馬4頭のうち、レッドモンレーヴを除く3頭、ファンタジスト、ボンボヤージ、アスクワンタイムは全きょうだいというから面白い。

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