第5コーナー ~競馬余話~
第60回 「ガビー」
2016.03.15
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2月13日に行われた第51回クイーンカップは記録ずくめのレースになった。
桜花賞、オークスを目指す3歳牝馬が集う、このレースで圧勝劇を演じたのはメジャーエンブレムだった。父ダイワメジャー、母キャッチータイトル、母の父オペラハウス(GB)という血統を持つ快足馬である。2015年の阪神ジュベナイルフィリーズで優勝し、JRA賞の最優秀2歳牝馬に選ばれた有力馬だ。この勝利で通算成績を5戦4勝とした。
クイーンカップで2着のフロンテアクイーンにつけた5馬身という着差はグレード制が導入された1984年以降、同レースの最大着差となった。従来の記録は1989年にカッティングエッジが2着のエースメロディーにつけた4馬身だった。単勝の払戻金130円はクイーンカップの最低払戻額。単勝支持率61.0%は1994年のヒシアマゾン(54.7%)を大きく上回る歴代優勝馬トップの記録となった。
だが、どの記録より驚かされたのは、東京競馬場の芝1600㍍でマークした1分32秒5という驚異的な優勝タイムだった。それまでのクイーンカップのレース記録だったキャットコイン(2015年)の1分34秒0を1秒5も上回るレース新記録となった。
メジャーエンブレムは6番枠からスタートすると押し出されるように先頭に立った。逃げたというよりスピードの違いでハナを切ったという感じだった。
1ハロンごとのラップは次の通りだ。12秒3―10.8―11.3―11.7―11.7―11.2―11.6―11.9。スタート直後の1ハロン以外はすべて11秒台以下という隙のないラップだ。4コーナーまで並びかけるように2番手を走っていたコパノマリーンは直線に向かうと急激にスピードダウンし、メジャーエンブレムから3秒4離された最下位の16着に敗れた。いかに厳しいラップだったかが、そのことでもよくわかる。
1990年以降、1月から6月までの、いわゆる春の東京競馬場の芝1600㍍で1分32秒5以下のタイムで優勝した3歳馬を調べてみた。過去の4頭はすべて牡馬。それも5月のGⅠレース、NHKマイルカップ優勝馬だった。
2004年キングカメハメハ1分32秒5、2009年ジョーカプチーノ1分32秒4、2010年ダノンシャンティ1分31秒4、2011年グランプリボス1分32秒2。このそうそうたるメンバーの中にメジャーエンブレムが牝馬として初めて加わった。しかも3歳2月での記録だから驚く。
クイーンカップを現場で見ていて思ったことがある。「テスコガビーって、こんな馬だったのかなあ」。資料映像や過去の記事でしか知らない伝説の名牝だ。
1975年、桜花賞とオークスの2冠に輝いた。桜花賞では21頭のライバルを相手に堂々の逃げ切り勝ち。2着のジョーケンプトンにつけた着差は「大差」。タイム差にして1秒7あった。改修前の阪神競馬場の芝1600㍍で勝ちタイムは1分34秒9。その2年前にニットウチドリが出した1分35秒4の従来の記録を0秒5更新する桜花賞レコードとなった。単勝の払戻金は110円。単勝支持率は72.4%に達した。そして1988年にアラホウトクに破られるまでテスコガビーの優勝タイムは桜花賞レコードとして12年間も守られた。テスコガビーはオークスも楽勝した。2着のソシアルトウショウにつけた着差は8馬身(タイム差1秒3)だった。
1982年に競馬記者になって、今年で競馬取材は35年目に突入した。けれども、どうしてもぬぐえないコンプレックスがある。トウショウボーイ、テンポイントをリアルタイムで見ていない。シンザンを知らない。ハイセイコーの熱狂は想像するしかない。テスコガビーを体験していないというのもコンプレックスの一つだ。
メジャーエンブレムはクイーンカップ優勝後、いったん放牧に出た。4月10日の桜花賞には、ぶっつけで向かう予定だ。クイーンカップを優勝で飾り、ぶっつけの桜花賞を優勝した例が過去に1度だけある。1976年のテイタニヤだ。テイタニヤは桜花賞に続くオークスでも見事に優勝し、牝馬2冠に輝いている。メジャーエンブレムはテスコガビーやテイタニヤのような2冠馬、いや3冠、4冠と白星を積み重ねてほしいと思う。そして将来、「僕はメジャーエンブレムを生で見た」と言ってみたい。
桜花賞、オークスを目指す3歳牝馬が集う、このレースで圧勝劇を演じたのはメジャーエンブレムだった。父ダイワメジャー、母キャッチータイトル、母の父オペラハウス(GB)という血統を持つ快足馬である。2015年の阪神ジュベナイルフィリーズで優勝し、JRA賞の最優秀2歳牝馬に選ばれた有力馬だ。この勝利で通算成績を5戦4勝とした。
クイーンカップで2着のフロンテアクイーンにつけた5馬身という着差はグレード制が導入された1984年以降、同レースの最大着差となった。従来の記録は1989年にカッティングエッジが2着のエースメロディーにつけた4馬身だった。単勝の払戻金130円はクイーンカップの最低払戻額。単勝支持率61.0%は1994年のヒシアマゾン(54.7%)を大きく上回る歴代優勝馬トップの記録となった。
だが、どの記録より驚かされたのは、東京競馬場の芝1600㍍でマークした1分32秒5という驚異的な優勝タイムだった。それまでのクイーンカップのレース記録だったキャットコイン(2015年)の1分34秒0を1秒5も上回るレース新記録となった。
メジャーエンブレムは6番枠からスタートすると押し出されるように先頭に立った。逃げたというよりスピードの違いでハナを切ったという感じだった。
1ハロンごとのラップは次の通りだ。12秒3―10.8―11.3―11.7―11.7―11.2―11.6―11.9。スタート直後の1ハロン以外はすべて11秒台以下という隙のないラップだ。4コーナーまで並びかけるように2番手を走っていたコパノマリーンは直線に向かうと急激にスピードダウンし、メジャーエンブレムから3秒4離された最下位の16着に敗れた。いかに厳しいラップだったかが、そのことでもよくわかる。
1990年以降、1月から6月までの、いわゆる春の東京競馬場の芝1600㍍で1分32秒5以下のタイムで優勝した3歳馬を調べてみた。過去の4頭はすべて牡馬。それも5月のGⅠレース、NHKマイルカップ優勝馬だった。
2004年キングカメハメハ1分32秒5、2009年ジョーカプチーノ1分32秒4、2010年ダノンシャンティ1分31秒4、2011年グランプリボス1分32秒2。このそうそうたるメンバーの中にメジャーエンブレムが牝馬として初めて加わった。しかも3歳2月での記録だから驚く。
クイーンカップを現場で見ていて思ったことがある。「テスコガビーって、こんな馬だったのかなあ」。資料映像や過去の記事でしか知らない伝説の名牝だ。
1975年、桜花賞とオークスの2冠に輝いた。桜花賞では21頭のライバルを相手に堂々の逃げ切り勝ち。2着のジョーケンプトンにつけた着差は「大差」。タイム差にして1秒7あった。改修前の阪神競馬場の芝1600㍍で勝ちタイムは1分34秒9。その2年前にニットウチドリが出した1分35秒4の従来の記録を0秒5更新する桜花賞レコードとなった。単勝の払戻金は110円。単勝支持率は72.4%に達した。そして1988年にアラホウトクに破られるまでテスコガビーの優勝タイムは桜花賞レコードとして12年間も守られた。テスコガビーはオークスも楽勝した。2着のソシアルトウショウにつけた着差は8馬身(タイム差1秒3)だった。
1982年に競馬記者になって、今年で競馬取材は35年目に突入した。けれども、どうしてもぬぐえないコンプレックスがある。トウショウボーイ、テンポイントをリアルタイムで見ていない。シンザンを知らない。ハイセイコーの熱狂は想像するしかない。テスコガビーを体験していないというのもコンプレックスの一つだ。
メジャーエンブレムはクイーンカップ優勝後、いったん放牧に出た。4月10日の桜花賞には、ぶっつけで向かう予定だ。クイーンカップを優勝で飾り、ぶっつけの桜花賞を優勝した例が過去に1度だけある。1976年のテイタニヤだ。テイタニヤは桜花賞に続くオークスでも見事に優勝し、牝馬2冠に輝いている。メジャーエンブレムはテスコガビーやテイタニヤのような2冠馬、いや3冠、4冠と白星を積み重ねてほしいと思う。そして将来、「僕はメジャーエンブレムを生で見た」と言ってみたい。