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第130回 「燻銀」

2022.01.11
 白毛の桜花賞馬ソダシの参戦によって、俄然注目度が高まった第22回チャンピオンズカップは2021年12月5日、中京競馬場で行われ、1番人気のテーオーケインズ(牡4歳、栗東・高柳大輔厩舎)が優勝した。
 前年の覇者で2着になったチュウワウィザードにつけた着差は6馬身。チャンピオンズカップが中京競馬場のダート1800mで行われるようになった2014年以降で最大の着差となった。

 テーオーケインズは4歳の2021年に大きく飛躍した1頭だ。年明けの名古屋城S(中京競馬場)で通算5勝目を挙げると、続くアンタレスS(阪神競馬場)で重賞初制覇。6月の交流GⅠ帝王賞(大井競馬場)では元中央馬のノンコノユメ以下を下して、ビッグタイトルを手にした。3連勝で臨んだ11月のJBCクラシック(金沢競馬場)では堂々の1番人気に支持されたが、スタートに失敗して4着に終わった。スタート練習を繰り返すなど立て直しを図り、見事にチャンピオンズカップで雪辱した。2021年は5戦4勝。主戦の松山弘平騎手がレース後のインタビューで話したように「これからのダート界を引っ張っていく存在」になった。

 テーオーケインズの父はシニスターミニスター(USA)である。2003年、父オールドトリエステ、母スウィートミニスターとの間に誕生した。日本でいえば、メイショウサムソンやアドマイヤムーンなどと同世代ということになる。

 米ケンタッキーダービーの重要なステップレースである3歳限定のブルーグラスS(GⅠ)がシニスターミニスターの現役時代のハイライトだ。

 2006年4月15日にキーンランド競馬場で行われたレースは9頭立てだった。ゴメス騎手に手綱を取られたシニスターミニスターはスタートから先頭に立ち、そのままダートの1800mを逃げ切って優勝した。2着のストームトレジャーにつけた着差は、なんと12馬身4分の3。直線入り口で8馬身あった着差を最後の直線でさらに広げてゴールした。

 続けて挑んだケンタッキーダービーは20頭立ての16着。その後も勝ち星を挙げることはできず、2007年、4歳8月に走ったレースを最後に現役を引退した。通算13戦2勝。ブルーグラスSの圧勝が最後の勝利となった。

 日本に輸入され、2008年に種付けを開始した。初年度産駒は2011年にJRAで15頭が出走し、1勝を挙げたのみに終わった。JRAの2歳種牡馬ランキングは73位だった。2年目の産駒からインカンテーションが誕生した。2歳から8歳まで現役を続け、レパードS、みやこS、平安S、マーチS、白山大賞典、武蔵野Sと6つのダート重賞で勝利を収めた。

 その後も産駒はダートを中心に活躍を続け、2019年のJBCレディスクラシック(JpnⅠ)(浦和競馬場)ではヤマニンアンプリメが優勝した。この時2着になったのはゴールドクイーン。シニスターミニスター産駒の1、2着独占となった。ちなみにゴールドクイーンは2018年の葵Sで優勝。芝のJRA重賞を制した唯一のシニスターミニスター産駒である。

 しかしシニスターミニスターには苦しい時代もあった。4年目の産駒はJRAの2歳戦で1勝も挙げることができず、11頭が出走して30戦0勝。2歳種牡馬ランキングは132位まで落ち込んだ。

 だがシニスターミニスター産駒はダート界で着実に結果を残した。2020年、地方競馬の種牡馬ランキングではサウスヴィグラス(USA)、ゴールドアリュール、パイロ(USA)に次ぐ4位となった。2021年はテーオーケインズなどの活躍によって、12月13日時点でJRA種牡馬ランキング17位にまでランクを上げてきた。これまでの自己最高は2017年の20位。産駒が競走年齢に達して11年目にして、自己最高が見えてきた。

 いぶし銀のような活躍で実績を挙げてきたシニスターミニスターは1年目に150万円だった種付料が、2021年には250万円になった。馬産地の人気は高く、同年には70頭あまりの産駒が誕生した。テーオーケインズの出現により、2022年はますます注目が集まりそうだ。
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