第5コーナー ~競馬余話~
第146回 「結晶」
2023.05.12
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桜花賞でドゥラメンテの遺児リバティアイランド(牝3歳、栗東・中内田充正厩舎)が快勝するのを目の当たりにして、かえすがえすも、ドゥラメンテの早世はもったいないことをしたと感じた。もう少し長生きしてくれれば、もっとたくさんのドゥラメンテ産駒を見ることができた。それに、きっと第2、第3のリバティアイランドを送り出してくれたことだろう。そう思わずにはいられなかった。
2021年8月31日、ドゥラメンテは種牡馬として繋養されていた北海道安平町の社台スタリオンステーションで急死した。急性大腸炎。9歳という若さだった。2017年に種付けを開始。現5歳から1歳までの5世代を残すのみで、この世を去ってしまった。
初年度産駒のタイトルホルダーが2021年の菊花賞で初めてのGⅠ制覇を飾ったのを皮切りに、2022年にはスターズオンアースが桜花賞とオークスの2冠に輝いた。タイトルホルダーもその後、天皇賞・春、宝塚記念と2つのGⅠ勝利を積み重ねた。2022年の年末にはリバティアイランドが阪神ジュベナイルフィリーズを制すると、ドゥラエレーデがホープフルSで勝利。3つしかない2歳GⅠのうち2つをものにした。そしてリバティアイランドの桜花賞優勝でドゥラメンテ産駒の桜花賞2連覇が達成された。初年度から3年連続でクラシック優勝馬を出し、産駒のGⅠ勝利はこれで8勝となった。このほかにヴァレーデラルナが2022年のJBCレディスクラシック(JpnⅠ)を勝っている。
2012年3月22日、ドゥラメンテは北海道のノーザンファームで誕生した。父キングカメハメハ、母アドマイヤグルーヴ、母の父サンデーサイレンス(USA)。両親ともに国内GⅠ優勝馬という良血を絵に描いたような血統だ。
美浦の堀宣行厩舎に所属し、㈲サンデーレーシングの服色で走った。通算9戦5勝、2着4回。2015年の皐月賞、日本ダービーを制し、4歳時には中山記念で優勝した。その後アラブ首長国連邦に遠征したドバイシーマクラシックでは2着。帰国初戦の宝塚記念ではレース中に故障を起こしながら2着になったが、このレースが現役最後の一戦となった。
父のキングカメハメハは2004年に距離1600㍍のNHKマイルカップと2400㍍の日本ダービーの「変則2冠」を史上初めて達成した。現役を引退後は種牡馬になり、2010年と2011年には2年連続して中央競馬のリーディングサイアーに輝いている。ドゥラメンテのほかにレイデオロがダービー制覇したほかアパパネが牝馬三冠に輝き、ロードカナロアは国内外で短距離GⅠ6勝を挙げる活躍を見せた。守備範囲は短距離から中距離まで広く、さらにはダートでもホッコータルマエなど4頭がGⅠ勝ち馬になっている。
ただドゥラメンテの血統的な特徴は母系にあるといっていい。
母アドマイヤグルーヴは2003年と2004年のエリザベス女王杯を連覇した名牝だ。その父サンデーサイレンスは日本競馬を1頭で変えた名種牡馬。1995年から13年連続でリーディングサイアーになった。アドマイヤグルーヴの母エアグルーヴは1996年のオークスを制し、牡馬相手に1997年の天皇賞・秋を快勝した。その父は凱旋門賞馬トニービン(IRE)。日本で種牡馬になったトニービンもまた1994年にリーディングサイアーになった。エアグルーヴの母ダイナカールは1983年のオークス馬。その父ノーザンテースト(CAN)も1982年から11年連続リーディングサイアーに輝いた名種牡馬だ。ダイナカールの母シャダイフェザーは中央競馬で2勝したガーサント(FR)の娘。ガーサントも1969年にリーディングサイアーに輝いている。
くどくどとドゥラメンテの母系について書いてきた。ドゥラメンテの体内には母系からサンデーサイレンス、トニービン、ノーザンテースト、ガーサントという一度はリーディングサイアーになったことのある名種牡馬の遺伝子がそなわっている。父のキングカメハメハもまたリーディングサイアーである。これでもか、これでもかというほどに日本競馬の粋を集めた、名種牡馬の結晶なのである。この血統が走ってくれなければ困るぐらい、日本の競馬にフィットした血統だ。ある程度、成功は予想されていたが、こんなに若くして死んでしまったのは想定外だった。
桜花賞の翌週に行われた皐月賞では、キタサンブラックを父に持つソールオリエンスが優勝した。キタサンブラックは2012年生まれ。ドゥラメンテとは同期だ。現役時代、2頭は3度対戦した。2015年の皐月賞とダービー、そして2016年の宝塚記念。3度ともドゥラメンテが先着した。ただ皐月賞ではドゥラメンテが1着でキタサンブラックは3着。宝塚記念でもドゥラメンテが2着でキタサンブラックは3着。切磋琢磨した間柄だった。志半ばで現役を引退したドゥラメンテに代わり、キタサンブラックは覚醒した。菊花賞と天皇賞・春のタイトルは持っていたが、その後、5つのGⅠ勝利を上乗せした。
1年遅れて種牡馬になったキタサンブラックはイクイノックス、ソールオリエンスという2頭のGⅠ馬を送り出し、先行したドゥラメンテを追いかけている。ドゥラメンテはいなくなってしまったが、種牡馬の世界でも良きライバルとして戦ってほしい。
2021年8月31日、ドゥラメンテは種牡馬として繋養されていた北海道安平町の社台スタリオンステーションで急死した。急性大腸炎。9歳という若さだった。2017年に種付けを開始。現5歳から1歳までの5世代を残すのみで、この世を去ってしまった。
初年度産駒のタイトルホルダーが2021年の菊花賞で初めてのGⅠ制覇を飾ったのを皮切りに、2022年にはスターズオンアースが桜花賞とオークスの2冠に輝いた。タイトルホルダーもその後、天皇賞・春、宝塚記念と2つのGⅠ勝利を積み重ねた。2022年の年末にはリバティアイランドが阪神ジュベナイルフィリーズを制すると、ドゥラエレーデがホープフルSで勝利。3つしかない2歳GⅠのうち2つをものにした。そしてリバティアイランドの桜花賞優勝でドゥラメンテ産駒の桜花賞2連覇が達成された。初年度から3年連続でクラシック優勝馬を出し、産駒のGⅠ勝利はこれで8勝となった。このほかにヴァレーデラルナが2022年のJBCレディスクラシック(JpnⅠ)を勝っている。
2012年3月22日、ドゥラメンテは北海道のノーザンファームで誕生した。父キングカメハメハ、母アドマイヤグルーヴ、母の父サンデーサイレンス(USA)。両親ともに国内GⅠ優勝馬という良血を絵に描いたような血統だ。
美浦の堀宣行厩舎に所属し、㈲サンデーレーシングの服色で走った。通算9戦5勝、2着4回。2015年の皐月賞、日本ダービーを制し、4歳時には中山記念で優勝した。その後アラブ首長国連邦に遠征したドバイシーマクラシックでは2着。帰国初戦の宝塚記念ではレース中に故障を起こしながら2着になったが、このレースが現役最後の一戦となった。
父のキングカメハメハは2004年に距離1600㍍のNHKマイルカップと2400㍍の日本ダービーの「変則2冠」を史上初めて達成した。現役を引退後は種牡馬になり、2010年と2011年には2年連続して中央競馬のリーディングサイアーに輝いている。ドゥラメンテのほかにレイデオロがダービー制覇したほかアパパネが牝馬三冠に輝き、ロードカナロアは国内外で短距離GⅠ6勝を挙げる活躍を見せた。守備範囲は短距離から中距離まで広く、さらにはダートでもホッコータルマエなど4頭がGⅠ勝ち馬になっている。
ただドゥラメンテの血統的な特徴は母系にあるといっていい。
母アドマイヤグルーヴは2003年と2004年のエリザベス女王杯を連覇した名牝だ。その父サンデーサイレンスは日本競馬を1頭で変えた名種牡馬。1995年から13年連続でリーディングサイアーになった。アドマイヤグルーヴの母エアグルーヴは1996年のオークスを制し、牡馬相手に1997年の天皇賞・秋を快勝した。その父は凱旋門賞馬トニービン(IRE)。日本で種牡馬になったトニービンもまた1994年にリーディングサイアーになった。エアグルーヴの母ダイナカールは1983年のオークス馬。その父ノーザンテースト(CAN)も1982年から11年連続リーディングサイアーに輝いた名種牡馬だ。ダイナカールの母シャダイフェザーは中央競馬で2勝したガーサント(FR)の娘。ガーサントも1969年にリーディングサイアーに輝いている。
くどくどとドゥラメンテの母系について書いてきた。ドゥラメンテの体内には母系からサンデーサイレンス、トニービン、ノーザンテースト、ガーサントという一度はリーディングサイアーになったことのある名種牡馬の遺伝子がそなわっている。父のキングカメハメハもまたリーディングサイアーである。これでもか、これでもかというほどに日本競馬の粋を集めた、名種牡馬の結晶なのである。この血統が走ってくれなければ困るぐらい、日本の競馬にフィットした血統だ。ある程度、成功は予想されていたが、こんなに若くして死んでしまったのは想定外だった。
桜花賞の翌週に行われた皐月賞では、キタサンブラックを父に持つソールオリエンスが優勝した。キタサンブラックは2012年生まれ。ドゥラメンテとは同期だ。現役時代、2頭は3度対戦した。2015年の皐月賞とダービー、そして2016年の宝塚記念。3度ともドゥラメンテが先着した。ただ皐月賞ではドゥラメンテが1着でキタサンブラックは3着。宝塚記念でもドゥラメンテが2着でキタサンブラックは3着。切磋琢磨した間柄だった。志半ばで現役を引退したドゥラメンテに代わり、キタサンブラックは覚醒した。菊花賞と天皇賞・春のタイトルは持っていたが、その後、5つのGⅠ勝利を上乗せした。
1年遅れて種牡馬になったキタサンブラックはイクイノックス、ソールオリエンスという2頭のGⅠ馬を送り出し、先行したドゥラメンテを追いかけている。ドゥラメンテはいなくなってしまったが、種牡馬の世界でも良きライバルとして戦ってほしい。