第5コーナー ~競馬余話~
第147回 「50代」
2023.06.08
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5月7日に行われた第28回NHKマイルカップ(GⅠ、東京競馬場、芝1600m)は内田博幸騎手が騎乗したシャンパンカラー(牡3歳、美浦・田中剛厩舎)が優勝し、重賞初勝利をGⅠで飾った。
序盤は後方を進み、最後の直線で末脚を引き出し、ウンブライルの追い込みをアタマ差でしのぎ切った。ベテラン内田騎手ならではのレース運びが功を奏した。
内田騎手にとってGⅠ勝利は2018年のフェブラリーS(騎乗馬ノンコノユメ)以来5年ぶりで通算13勝目。重賞勝ちも2020年のセントライト記念(バビット)以来3年ぶりで通算55勝目だった。地方競馬で3000勝、中央競馬に移籍後も1000勝を超える勝ち星を挙げている名手が久しぶりに脚光を浴びた。
NHKマイルカップは内田騎手の騎手人生のターニングポイントになったレースでもある。2007年、当時、地方・大井競馬に所属し、地元で年間最多勝を続けていた。そんな時期に中央所属のピンクカメオ陣営から騎乗依頼を受け、見事に大外一気の追い込みを決めた。18頭立て17番人気での大逆転劇だった。この勝利で自信をつかんだ内田騎手は中央競馬への移籍を決断し、翌年3月、JRAの騎手免許を手にした。
転身後の活躍はご存じの通りだ。移籍1年目の2008年に、宝塚記念(エイシンデピュティ)、菊花賞(オウケンブルースリ)という2つのGⅠ勝利を含む123勝を挙げ、関東最多勝に輝いた。2年目の2009年にもフェブラリーS(サクセスブロッケン)でGⅠ勝利をつかみ、年間146勝でJRAのリーディングジョッキーになった。前年まで7年連続でトップに立っていた武豊騎手の牙城を崩した。
2010年にはエイシンフラッシュとのコンビで第77回日本ダービーを制覇。地方競馬からの移籍騎手としては、安藤勝己騎手(2004年キングカメハメハ)に次ぐ史上2人目のダービージョッキーとなった。2012年にはゴールドシップとのコンビで皐月賞、菊花賞、有馬記念を制覇。皐月賞、日本ダービー、菊花賞で優勝した3冠騎手となった。中央に移籍して、瞬く間に「ウチパク」の愛称はファンの間に広がっていった。
しかし近年はGⅠレースでの騎乗自体が減っていた。若手の台頭などが理由だ。2021年は5レースに騎乗していたが、2022年は天皇賞・春のクレッシェンドラヴ(14着)1鞍だけという結果になった。2023年2月のフェブラリーSで久しぶりにアドマイヤルプス(5着)にまたがった時、うれしかったと振り返った。
今回のNHKマイルカップの優勝は、52歳9か月12日での達成となり、GⅠ優勝騎手としては史上4番目の高齢記録となった。1位は武豊騎手で2023年4月の大阪杯をジャックドールで優勝した時の54歳0か月19日だ。2位は岡部幸雄・元騎手で、2002年秋の天皇賞をシンボリクリスエス(USA)で制した時の53歳11か月27日。3位は再び武豊騎手。ドウデュースで2022年のダービーに勝った時、53歳2か月15日だった。1984年のグレード制導入以降、50代の騎手によるGⅠ制覇は今回の内田騎手を含めのべ12度目となった。
騎手ばかりでなく、最近はトレーニング方法の発達などの理由でアスリートの選手寿命が延びている。現在、中央競馬には50代の騎手が10人現役で頑張っている。年の順に列挙すると柴田善臣(56)、小牧太(55)、熊沢重文(55)、横山典弘(55)、武豊(54)、内田博幸(52)、田中勝春(52)、北沢伸也(51)、岡田祥嗣(51)、江田照男(51)の各騎手だ。年齢は2023年5月7日現在である。
柴田善臣騎手は勝つたびに自己の持つJRA最年長勝利記録を更新し続けているほか、2021年のレパードSをメイショウムラクモで優勝した時の55歳0か月10日は重賞優勝の最年長記録ともなっている。
こうしたベテランたちの活躍が目立つ一方で、2022年は新たなGⅠ騎手が5人も誕生した。
高松宮記念をナランフレグで制した丸田恭介騎手(当時35、16年目)、天皇賞・春をタイトルホルダーとともに優勝した横山和生騎手(29、12年目)、スプリンターズSでジャンダルムに騎乗した荻野極騎手(24、7年目)、秋華賞でスタニングローズを優勝に導いた坂井瑠星騎手(24、7年目)、ジュンライトボルトの手綱を取り、チャンピオンズカップに優勝した石川裕紀人騎手(27、9年目)だ。
陸上競技や水泳は身体能力の差が勝敗を分けることが多い。これに対し、ゴルフやプロ野球などテクニックが必要なスポーツでは、体力的に劣る高齢選手が若手と互角に戦うことが可能だ。競馬のジョッキーにも同じことが当てはまる。体力だけじゃなく、技術・スキルがものをいう世界だ。
43歳のクリストフ・ルメール騎手と37歳の川田将雅騎手がリーディング争いをし、20代の岩田望来騎手、横山武史騎手が上位をうかがう。50代の武豊騎手もベスト10圏内にいて、内田騎手も大レースでの勝負強さを見せた。ジョッキーの世界はベテラン、中堅、若手がバランス良く活躍する理想的な状況だ。
序盤は後方を進み、最後の直線で末脚を引き出し、ウンブライルの追い込みをアタマ差でしのぎ切った。ベテラン内田騎手ならではのレース運びが功を奏した。
内田騎手にとってGⅠ勝利は2018年のフェブラリーS(騎乗馬ノンコノユメ)以来5年ぶりで通算13勝目。重賞勝ちも2020年のセントライト記念(バビット)以来3年ぶりで通算55勝目だった。地方競馬で3000勝、中央競馬に移籍後も1000勝を超える勝ち星を挙げている名手が久しぶりに脚光を浴びた。
NHKマイルカップは内田騎手の騎手人生のターニングポイントになったレースでもある。2007年、当時、地方・大井競馬に所属し、地元で年間最多勝を続けていた。そんな時期に中央所属のピンクカメオ陣営から騎乗依頼を受け、見事に大外一気の追い込みを決めた。18頭立て17番人気での大逆転劇だった。この勝利で自信をつかんだ内田騎手は中央競馬への移籍を決断し、翌年3月、JRAの騎手免許を手にした。
転身後の活躍はご存じの通りだ。移籍1年目の2008年に、宝塚記念(エイシンデピュティ)、菊花賞(オウケンブルースリ)という2つのGⅠ勝利を含む123勝を挙げ、関東最多勝に輝いた。2年目の2009年にもフェブラリーS(サクセスブロッケン)でGⅠ勝利をつかみ、年間146勝でJRAのリーディングジョッキーになった。前年まで7年連続でトップに立っていた武豊騎手の牙城を崩した。
2010年にはエイシンフラッシュとのコンビで第77回日本ダービーを制覇。地方競馬からの移籍騎手としては、安藤勝己騎手(2004年キングカメハメハ)に次ぐ史上2人目のダービージョッキーとなった。2012年にはゴールドシップとのコンビで皐月賞、菊花賞、有馬記念を制覇。皐月賞、日本ダービー、菊花賞で優勝した3冠騎手となった。中央に移籍して、瞬く間に「ウチパク」の愛称はファンの間に広がっていった。
しかし近年はGⅠレースでの騎乗自体が減っていた。若手の台頭などが理由だ。2021年は5レースに騎乗していたが、2022年は天皇賞・春のクレッシェンドラヴ(14着)1鞍だけという結果になった。2023年2月のフェブラリーSで久しぶりにアドマイヤルプス(5着)にまたがった時、うれしかったと振り返った。
今回のNHKマイルカップの優勝は、52歳9か月12日での達成となり、GⅠ優勝騎手としては史上4番目の高齢記録となった。1位は武豊騎手で2023年4月の大阪杯をジャックドールで優勝した時の54歳0か月19日だ。2位は岡部幸雄・元騎手で、2002年秋の天皇賞をシンボリクリスエス(USA)で制した時の53歳11か月27日。3位は再び武豊騎手。ドウデュースで2022年のダービーに勝った時、53歳2か月15日だった。1984年のグレード制導入以降、50代の騎手によるGⅠ制覇は今回の内田騎手を含めのべ12度目となった。
騎手ばかりでなく、最近はトレーニング方法の発達などの理由でアスリートの選手寿命が延びている。現在、中央競馬には50代の騎手が10人現役で頑張っている。年の順に列挙すると柴田善臣(56)、小牧太(55)、熊沢重文(55)、横山典弘(55)、武豊(54)、内田博幸(52)、田中勝春(52)、北沢伸也(51)、岡田祥嗣(51)、江田照男(51)の各騎手だ。年齢は2023年5月7日現在である。
柴田善臣騎手は勝つたびに自己の持つJRA最年長勝利記録を更新し続けているほか、2021年のレパードSをメイショウムラクモで優勝した時の55歳0か月10日は重賞優勝の最年長記録ともなっている。
こうしたベテランたちの活躍が目立つ一方で、2022年は新たなGⅠ騎手が5人も誕生した。
高松宮記念をナランフレグで制した丸田恭介騎手(当時35、16年目)、天皇賞・春をタイトルホルダーとともに優勝した横山和生騎手(29、12年目)、スプリンターズSでジャンダルムに騎乗した荻野極騎手(24、7年目)、秋華賞でスタニングローズを優勝に導いた坂井瑠星騎手(24、7年目)、ジュンライトボルトの手綱を取り、チャンピオンズカップに優勝した石川裕紀人騎手(27、9年目)だ。
陸上競技や水泳は身体能力の差が勝敗を分けることが多い。これに対し、ゴルフやプロ野球などテクニックが必要なスポーツでは、体力的に劣る高齢選手が若手と互角に戦うことが可能だ。競馬のジョッキーにも同じことが当てはまる。体力だけじゃなく、技術・スキルがものをいう世界だ。
43歳のクリストフ・ルメール騎手と37歳の川田将雅騎手がリーディング争いをし、20代の岩田望来騎手、横山武史騎手が上位をうかがう。50代の武豊騎手もベスト10圏内にいて、内田騎手も大レースでの勝負強さを見せた。ジョッキーの世界はベテラン、中堅、若手がバランス良く活躍する理想的な状況だ。