JBIS-サーチ

国内最大級の競馬情報データベース

第161回 「北賛」

2024.08.13

 7月8、9日の両日、北海道苫小牧市のノーザンホースパークで行われた日本競走馬協会(JRHA)主催のセレクトセール2024は今年も盛況のうちに幕を閉じた。セレクトセールには2日間で1歳馬、当歳馬合わせて472頭が上場され、96.4%に当たる455頭が売却された。売上総額は289億1,800万円に達し、4年連続でレコード記録を更新、売却率も過去最高となった。(金額はすべて税抜き)


 好調なセールを牽引したのはキタサンブラック産駒だった。1歳セッションの牡牝、当歳セッションの牡牝とも最高価格をつけたのは、すべてキタサンブラック産駒だった。今回のようにすべてのセッションで牡牝ともに1頭の種牡馬の産駒が最高価格をマークした例はディープインパクトが3度記録した以外はない。


 初日の1歳セッションで牡馬の最高額5億9,000万円をマークしたのは「デルフィニアⅡの2023」だ。母デルフィニアⅡ(IRE)はアイルランド産で、母の父は名種牡馬Galileo(IRE)。祖母のAgain(IRE)はアイルランド1000ギニーの勝ち馬である。7,000万円からスタートした競りは3分ほど続き、5億9,000万円に達したところで落札を知らせるハンマーが落ちた。落札したのはロデオジャパン。これまでの記録だった20年ショウナンアデイブ(父ディープインパクト、母シーヴ(USA))の5億1,000万円を8,000万円上回るセレクトセール1歳セッションの最高額となった。


 1歳牝馬の最高価格は「アスコルティの2023」だった。半姉のアスコリピチェーノ(父ダイワメジャー)は今年の桜花賞とNHKマイルCでいずれも2着になった。4億円の価格は牡馬も含めた1歳馬でも2番目の高額で、11年にラストグルーヴ(父ディープインパクト、母エアグルーヴ)がマークした3億6,000万円を更新する1歳牝馬の史上最高価格となった。落札したのは日本ダービーをダノンデサイルで制した(株)ダノックスだった。


 1歳セッションの翌日に行われた当歳セッションでも「主役」はキタサンブラック産駒だった。牡の最高価格は「セリエンホルデの2024」で、ついた価格は4億1,000万円。母セリエンホルデ(GER)はドイツ産で、半兄はNHKマイルCや毎日王冠で優勝したシュネルマイスター(GER)。田畑利彦オーナーが落札した。牝馬の最高価格は「ドリームアンドドゥの2024」の2億円だった。「デルフィニアⅡの2023」を落札したロデオジャパンが、この牝馬も競り落とした。ドリームアンドドゥ(IRE)はアイルランド産。フランスで競走生活を送り、6戦4勝の成績を残した。20年の仏1000ギニーで優勝した実績を持つ。


 キタサンブラック産駒は2日間で合計30頭が上場され、すべて落札された。売上総額は36億3,500万円。1頭平均が1億2,000万円を超えた。これほどキタサンブラック産駒が人気を集めたのは、ひとえに代表産駒イクイノックスの活躍のおかげだ。


 23年、イクイノックスは4戦4勝の成績で世界を驚かせた。アラブ首長国連邦(UAE)で行われたドバイシーマクラシック(芝2410㍍)で2着に3馬身以上の差をつける圧勝劇を演じた。それもこれまで見せたこともない逃げ切り勝ち。力の違いを見せつけた。この時の2~8着馬のうち4頭が、その後、年内に各国でGⅠ勝ちを収め、イクイノックスの名声はさらに上がった。結局、日本調教馬としては歴代最高の135というレーティングを与えられ、23年の世界ナンバーワンホースに選ばれた。


 初年度からイクイノックスが誕生していなかったら、キタサンブラックの運命は違っていたかもしれない。


 18年の種牡馬1年目こそ130頭に種付けする人気ぶりだったが、その後、19年は110頭、20年は92頭、21年は102頭と当初の勢いはなくなっていた。


 21年11月にイクイノックスが東京スポーツ杯2歳Sを鮮やかに勝ち、デビューからの2連勝を飾ると、生産界の見る目は変わっていった。22年は178頭と5年目で最多となる種付けを行い、23年4月に産駒ソールオリエンスが皐月賞で優勝を飾ると、同年には242頭に種付けする人気ナンバーワン種牡馬になった。種付頭数の増加に伴い、種付け相手のレベルも上がった。今年のセレクトセールに上場された1歳、当歳はキタサンブラックの勢いがついた時の産駒である。


 中央競馬で6月1日に始まった2歳戦は7月14日まで74戦が終わった。この時点で種牡馬リーディング2歳部門のトップにいるのがキタサンブラックである。函館2歳Sに出走したサトノカルナバルが優勝し、デビューから2連勝したことで賞金を上乗せした。これまで中距離を得意とする産駒が多かったが、芝1200㍍の函館2歳Sをサトノカルナバルが勝ったことはキタサンブラック産駒の新たな可能性を見せたことになる。


 昨年の2歳リーディングサイアーだったキズナが2位、ダノンデサイルやブローザホーン、テンハッピーローズなど24年前半に3歳・古馬の活躍が目立ったエピファネイアが3位につけ、その差はわずか。年末までにどう順位が変動するか予断を許さないが、キタサンブラック産駒の動向から目を離せない。

トップへ