文字サイズ

文字サイズとは?



烏森発牧場行き

吉川良 烏森発牧場行き

2009年の記事一覧

第180便 すたこらすたこら

 ウインズへ行こう。家を出る。住宅地の坂道をおりていると,静かな空気へ,カラスがうるさく鳴いた。電線か木の枝か屋根かに,3羽か4羽。
 「こんにちわ」
 ひょっこりと老婆が歩いてきて私とすれちがい,かすかに言った。
 「こんにちわ」

>>続きを読む

第179便 とてもの時代

 信者が祈りを捧げて眠りにつくように,私は本を手にベッドで横になる。その本は,言わば,友だちと称んでいいかな。
 ここ数日の友だちは,文春文庫の,須賀敦子「コルシア書店の仲間たち」だ。
 (1950年代の半ばに大学を卒業し,イタリアへ留学した著者は,詩人のトゥロルド司祭を中心にしたミラノのコルシア書店に仲間として迎え入れられる。理想の共同体を夢みる三十代の友人たち,かいま見た貴族の世界,ユダヤ系一家の物語,友達の恋の落ちつき先など,書店の人々をめぐる情景を流麗に描いたエッセイ)というのが,裏表紙にある紹介の文である。
 

>>続きを読む

第178便 アベタケ,知ってる?

 松たか子の主演映画「ヴィヨンの妻」の根岸吉太郎監督が,カナダで開催された第33回モントリオール世界映画祭で最優秀監督賞を受賞し,「メルシー・ボク(ありがとう)」を5回も繰り返した,と新聞で読んだ。

>>続きを読む

第177便 キムラくん

 ビッグレッドファーム明和の事務所は,タネ付けシーズンだと朝5時半の始業だが,7月になって8時になった。事務所のファックスを使わせてもらって,そのあと,ほとんどの朝,スタリオンの厩舎に寄る。

>>続きを読む

第176便 斜里から,相模原から

 40歳を過ぎて競馬のことを文章にしはじめた私は,牧場の経営者や従業員や,馬主や調教師たちと会う機会が多くなった。あれえ,と思った。競馬の世界というのは,人に会うと,たいてい,「この人,お金持ちなのか貧乏なのか。この人,何を言ったって,馬を買える人じゃないな。この人,有名なのか無名なのか」そんなふうに見られているような気がした。

>>続きを読む

第175便 大井で青年に会って

 16頭立て8番人気,金子正彦騎乗のサイレントスタメン(父レギュラーメンバー,母ジプシーワンダー,母の父ブライアンズタイム)が東京ダービーを勝った日の大井競馬場で,
 「どうも」
 と青年に挨拶をされた。パドックの近くの人ごみのなかだ。
 「どうも」
 そう私も挨拶を返したが,さて,誰?

>>続きを読む

第174便 人,いとしき日日よ

 5月8日,金曜日の夜,横浜の港に近いホテルで,私流に言うと「ルナアル先生を偲ぶ会」があった。ホテルの案内板は,むろん本名での表示だ。

>>続きを読む

第173便 桜川

 ニュージーランドTがメインの日の中山競馬場。まだ午前の,快晴のパドックで声をかけられた。北海道浦河のAクンだった。私はAクンの父とはつきあいがなく,祖父と仲良し。中学生だった孫のAクンを連れた祖父が私の家に泊まったこともある。

>>続きを読む

第172便 トシザブイとツキサムホマレ

 「しょうがねえなあ,こんなとこにシケこんじゃって。ペコちゃん,泣くぞ」ベッドに寄せた丸椅子に腰かけて私が言い,
 「ナサケなくて,ヘもナミダも出ねえ」とクボちんがベッドで言い返した。

>>続きを読む

第171便 国分寺のオズさん

 東京競馬場へ行くとき,川崎駅で立川行きの南武線に乗る。下車する府中本町駅まで,駅の数は19。時間は45分かかる。もう何十年も前から,どうして準急と急行とかがなくて,各駅停車しかないのだろうと思う。そうか,行くときは競馬新聞をゆっくりと読み,たいてい損をしている帰りは,ゆっくりと頭を冷やせということかな?

>>続きを読む