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2018年の記事一覧

  • 第288便 ちまちま 2018.12.11

     JR桜木町駅に近いコーヒーショップで競馬新聞を読んでいると、「ここ、いいですか」と若い男が私と相席になった。小さなテーブルをはさんで彼も、競馬新聞を持っている。 このひと、誰かに似ている。ずいぶん、似ている。そう、ジャニーズのグループ、嵐の二宮和也に顔も体型も似ている。 「まさか、あなたは、嵐のニノじゃないよね」 コーヒーを買ってきた彼に私が笑いかけた。 「ときどき、似てるって言われる」 そう言って彼は、 「はた...

  • 第287便 競馬学者 2018.11.12

     「この一年、こんなに自分が親父のことを考えるなんて思わなかったなあ。なんだか親父の悲しさとか寂しさみたいなものが、死んでから見えてきたような気がするんですよ。 明日、会食のとき、ひとこと、親父のことを話してもらえませんか。お願いします」 と9月28日、金曜日の晩、川崎に住む昌平さんが電話してきた。明日、鶴見の寺で、イダさんの一年忌がある。昌平さんはイダさんのひとり息子で50歳。横浜の倉庫会社勤務だ。 イダさんと私は...

  • 第286便 厚真の一本道 2018.10.15

     2018年9月10日、朝7時、目をさまして私はベッドから手をのばしてカーテンをあけ、雨あがりらしい空を眺めた。薄い青のひろがりにトンビが現れ、すぐに消える。 「ゆめうつつ」 と心で言って、夢現、と心に漢字で書いてみる。夢だか現実だかわからないようにぼんやりしていること。 本当にそうなのだ。夢を見ていたのにはちがいないのだけれど、それがしっかりと今日のことのように頭に残っているのだ。 場所は北海道勇払郡の吉田牧場である...

  • 第285便 札幌開幕 2018.09.12

     札幌に佐藤行夫という友だちがいた。2014年10月に、突然のように病魔に襲われ、62歳で旅立ってしまったのだが、それから夏が来て、競馬が函館から札幌に移ると、よく私は佐藤行夫の影とビールをのんでいる。 佐藤行夫は青森県上北郡の生まれ。中学を卒業して姉の嫁ぎ先の札幌に来て大工になった。 「おれはよ、ガクはネエけどウデがアル」 というのが佐藤行夫のコマーシャルだ。 横山典弘のタスカータソルテが、前年のグランプリホースで蛯名...

  • 第284便 どうして? 2018.08.10

     1983(昭和58)年5月のこと、東京の港区六本木の交差点ですれちがった常盤新平さん(翻訳家。1986年に「遠いアメリカ」で直木賞受賞)が、いい時に会ったと足を止めた。今夜、この近くで、社台ファームのアンバーシャダイの春の天皇賞を勝った祝いの会があり、招かれているのだが、急用が発生して行けなくなり、社台の人に電話しておくから、代わりに出席してほしいと常盤さんが言うのである。 代理でいいのかなと思いながら、面白そうだなと思...

  • 第283便 ヌマさんのなみだ 2018.07.13

     5月の初めだったか、晴れた日の夕方、ピンポーンと玄関が鳴って出てみると、植木屋のヌマさんが笑い顔で立っていた。七十歳。まだ元気に仕事している。私とはウインズ横浜の古い仲間で、去年の暮れには、私の家の小さな庭もやってもらった。横浜の戸塚の造園会社に勤めている。 「こっちに現場があってさ、帰り道に通りかかったもんで寄らしてもらった。急で悪いと思ったけど、顔見て行こうかなって」 「車だよね。ビールはダメだな」 「すぐ...

  • 第282便 フツウノアルバム 2018.06.11

     明日は次兄の三年忌だという夜、ちびちびと酒をのみながら、もうずいぶん、アルバムというのを見ていないなあと思い、納戸の奥に積まれたままのアルバムの山から、気ままに5冊ほど抱えて酒に戻った。 5冊のなかに1967(昭和42)年のものがあり、モノクロ写真の一枚に、「おお!」と声が出そうになった。競馬場のスタンドを背景に、父、長兄、次兄、私が並んでいて、 「昭和42年11月3日。森安重勝のメジロサンマンが目黒記念を勝った日。府中...

  • 第281便 マグニさん 2018.05.13

     友だちと酒をのみながら、にぎやかにさくらの花を見あげるのも人生の幸せだが、ひとりで静かにさくらの花の下にいるのも幸せである。 私が暮らす住宅地に小さな公園があり、5本のさくらが花を咲かすと、まさしくさくらの園になって明るい。よく晴れた日の午前、郵便ポストへ行った帰りに、誰もいない公園の藤棚の下のベンチに腰かけ、さくらの園をひとり占めした。 うーん、今年もさくらを見た、とじいさんは思い、今年のさくらはどちらも咲く...

  • 第280便 諏訪湖とユッコ 2018.04.12

     2017年の師走のこと、仕事部屋で本の探しものをしながら、ふと目にとまった一冊を手にした。仕事先の京都から帰ったばかりで、この本、たしか、若いときに京都で暮らしていたときからあったよなぁと思ったのだ。 ヘルマン・ヘッセ著作集、詩集・孤独者の音楽、高橋健二訳である。ひらくと、ぽち袋がはさんであって、おどろき。小さな端正な字で、 「ま、一生懸命に働いていると、思いがけずにうれしいことが生まれ、不思議な幸せの日になるの。...

  • 第279便 恋の12着 2018.03.12

     寒い朝、家から徒歩で20分ほどの病院へ、9時に予約の健康診断へ歩いている途中、通りかかりの小さな公園に目が行った。砂場で2歳ぐらいの男の子が遊び、砂場のへりに腰をおろした母親だろう若い女がぼんやりしている。 その近くで、毛糸の帽子をかぶった老人がスローモーションのように身体を動かし、その周囲をまわるように老婆が、小さなベビーカーのようなものにつかまって、ゆっくりゆっくりと歩く。 私は少し立ち止まって、その小さな公...

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