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プロフィール
吉川良作家

1937年東京都生まれ。
芝高等学校卒、駒澤大学仏教学部中退。
薬品会社の営業、バーテンダーなど数々の職業を経験。
1978年すばる文学賞受賞。
1999年社台ファームの総帥、吉田善哉氏を描いた「血と知と地」(ミデアム出版社)で、JRA馬事文化賞、ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。
JBBA NEWS掲載の「烏森発牧場行き」第1便~第100便は「サラブレッドへの手紙(上・下巻)として2003年源草社から出版されている。
著者のエッセーには必ず読む人の心をオヤッと引きつける人物が毎回登場する。
「いつも音無しの構えでみなの話に耳をかたむけ・・・」という信条で、登場人物の馬とのかかわり、想いを引き出す語り口は、ずっと余韻にひたることができるエッセーとなっている。
馬・競馬について語る時は、舌鋒鋭く辛口の意見も飛び出すが、その瞳はくすぐったいような微笑みを湛えている傑人である。

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  • 第339便 人生の一日 2023.03.10

     ビッグレッドファームを営む岡田繁幸と、川崎競馬の調教師の河津政明は、いわば「仕事のコンビ」だった。仕事ひと筋で休まない岡田繁幸に、少年時代の粗野を残しているような河津政明は、救いの存在だったのかもしれない。 河津政明と私のつきあいは、いわば「遊びのコンビ」だった。人間は、仕事を一生懸命にしなければならないが、しかし、ふざけもしなければヤッテラレナイというのが、「遊びのコンビ」の言い分。 酒をのまないのに酒場好き...

  • 第338便 53年、ひとりで 2023.02.14

     2022年の有馬記念の日、午後1時からはグリーンチャンネルとの仕事の約束があるので自由はないと思い、午前中に中山競馬場をうろつきまわった。 パドックを見つめ、馬券を買うほかに、私の場合、競馬のことを書く仕事の都合で、競馬場の空気を、うろつきまわって吸いあげるのも、長年の習性なのである。競馬場にはいろいろな人が来る。そのいろいろな人の表情、ふるまい、会話などに触れるのも、私の競馬なのだ。 2022年の有馬記念の中山競馬場...

  • 第337便 リラ祭 2023.01.11

     モーリスとジェンティルドンナの娘、ジェラルディーナが第47回エリザベス女王杯を勝った11月13日の夜、東京の大田区羽田に住む小沢さんから電話がきて、 「いやあ、しばらくですね、百年ぶりのような気がする」 と私が言った。コロナ禍の前には、ウインズ横浜や、その近くの酒場で、ちょこちょこ会っていたのだ。 「今日、とんでもないことが起きちゃったんですよ。エリザベス女王杯の3連複が当たっちゃったんです。もうねえ、びっくり。まさ...

  • 第336回 秋、祈り 2022.12.12

     ウクライナのキーウ近郊ボロジャンカで2022年10月、電力危機に見舞われ、明かりに使うローソクを手に、窓の外を見つめるバアさん。 新聞にあった、その写真を見て、見つめて、ウクライナを破壊しているロシアのボスが、この写真を見たら、どんなふうに感じるのだろうかと私は思った。ひょっとして、そのボスは、母親から生まれた生きものではないのかも。では、何から生まれた生きものなのだろう。 「窓から見つめるバアさん」と書いて、私が女...

  • 第335回 わたしの馬、タラレバ 2022.11.11

     あたりまえのことを言うなと叱られそうだが、八十五歳になっての日々は、「おれにとっても初めての経験だよなあ」とひとりごとを言って、ちょっと笑いそうになる。 それでつくづく、人間という生きもの、何か楽しみがなくなったら元気を失い、毎日を空しく過ごして、いっそう身体にも悪いよなあと思う。 おかげさまで私は、自分用に書き止めておいた、誰かしらと会ったときの記録を綴ったノートがたくさんあり、それを読みかえすという楽しみが...

  • 第334回 ああ、手紙 2022.10.12

     新聞の見出しに大きな活字で、「ユーチューブも、ドラマも、勉強も、食事も、お風呂も、寝る時も一緒に」とあり、もっと大きな活字で、「つながり続ける若者」とあり、「急成長の音声SNSパラレル」という見出しもついている。 『鳥取県の高校3年生の「ちゃんさん」(18)の夜は、スマホとともに過ぎていく。「推しの動画を友達と見ながら話します。」ツイッターやインスタも使うが、最近はもっぱら「パラレル」のアプリにどっぷり。何時間もつな...

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