烏森発牧場行き
1937年東京都生まれ。
芝高等学校卒、駒澤大学仏教学部中退。
薬品会社の営業、バーテンダーなど数々の職業を経験。
1978年すばる文学賞受賞。
1999年社台ファームの総帥、吉田善哉氏を描いた「血と知と地」(ミデアム出版社)で、JRA馬事文化賞、ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。
JBBA NEWS掲載の「烏森発牧場行き」第1便~第100便は「サラブレッドへの手紙(上・下巻)として2003年源草社から出版されている。
著者のエッセーには必ず読む人の心をオヤッと引きつける人物が毎回登場する。
「いつも音無しの構えでみなの話に耳をかたむけ・・・」という信条で、登場人物の馬とのかかわり、想いを引き出す語り口は、ずっと余韻にひたることができるエッセーとなっている。
馬・競馬について語る時は、舌鋒鋭く辛口の意見も飛び出すが、その瞳はくすぐったいような微笑みを湛えている傑人である。
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昔のこと、「時間、あるかね?」と、社台ファームのボス、吉田善哉さんから電話がくると、それは美浦トレセンへ一緒に行こうよという誘いだった。それでよく同行をした。 美浦へ着くまでの車中、善哉さんは「言葉」についての話をするのが好きだった。例えば、 「草鞋(わらじ)を脱ぐ、というのはどういう意味なのかね」 といきなりの質問を私にぶつけてくるのだ。 「旅を終えるという意味もあるし、各地を回り歩いていたバクチ打ちが、或る...
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